エアコンの仕組みを徹底解説！｜車用と家庭用、仕組みは違う？

エアコンは冷房と暖房、除湿などの機能が使用でき、天候や気温に合わせて、1年を通して部屋の中を快適にしてくれる便利な家電製品です。しかし、なぜエアコンは1台で冷房と暖房という正反対の機能を実現しながら室内を快適な温度にできるのでしょうか？

エアコンには、他の暖房器具などにない仕組みが搭載されています。その仕組みにより、年中使用できる温度調節が可能となっているのです。そこで本記事では、エアコンの仕組みについて詳しくまとめました。

エアコンの効果的な使用方法と併せて、車用エアコンの仕組みについても詳しく解説します。普段何気なく使用しているエアコンの仕組みを知り、室内を快適にするためのエアコンの使い方もマスターしましょう。

エアコンがなぜ1年を通して快適な室温に調整できるのでしょうか。その仕組みは、液体や気体の性質がポイントです。

液体は気体になるときに周囲から熱を吸収し、逆に気体が液体になるときは熱を放出するという性質を持っています。エアコンは、この液体と気体の性質を利用して室内の気温を調整します。その際に欠かせないのが、「冷媒ガス」と呼ばれる物質です。

冷媒ガスは、エアコンの室内機と室外機の間を循環しながら熱を運びます。液体と気体の性質を利用して得た熱を冷媒ガスが運ぶことにより、室内温度を調整しています。

かつて、エアコンの冷媒ガスとして「フロンガス」という温室効果ガスが使用されていました。このガスはオゾン層を破壊する原因とされており、現在使用されているものは環境負荷の低いタイプのフロンガスです。

しかし、フロンガスは2004年にすでに生産総量規制となっており、2020年に全廃・生産中止となっています。そのため、近年販売されているエアコンはフロンガスを使用しない「ノンフロン」の製品です。古いモデルのエアコンは冷媒であるフロンガスが入手困難となるため、修理ができなくなることも予想されるでしょう。

エアコンは室外機を設置していることから、取り込んだ外気の温度を調整して室内に送り込んでいると思っている人も多いのではないでしょうか。実は、エアコンから送り出される空気は外気ではなく、室内の空気です。

つまり、室内の空気を取り込んだエアコンは、その空気を熱交換器で冷やす、または温めることにより、室温を調整しているのです。ただし、例外として「酸素エアコン」と呼ばれる一部のエアコンは、外気を取り込む仕組みとなっています。

室内機：室内に設置する、「エアコン本体」とされているものです。ここから放出される空気で、室内の温度を調整しています。

室外機：室内機と対になっている、屋外に設置される機器です。室内機と接続されており、冷媒ガスで運ばれた熱が、この部分で降ろされます。

熱交換器：室内機と室外機それぞれに搭載されている機器で、冷媒ガスを冷やして液化させたり、熱により気化させたりする役割を持ちます。先述のように、エアコンは液体と気体の性質を利用して温度を調整するため、熱交換器は重要な役割を持っています。

ファン：室外機の中に搭載されている、内部で回転する機構です。取り込んだ空気の熱や冷気を吐き出す役割を持っています。

冷媒ガス：室内機と室外機の間を循環し、空気の熱を運ぶエアコンで必要不可欠な物質です。

圧縮機：冷媒ガスを圧縮して高温・高圧の気体にするための、室外機に搭載されている機器です。

膨張弁：冷媒ガスの圧力を低下させ、低温・低圧にするためのもので、こちらも室外機に搭載されています。

エアコンの冷房運転では、室内機と室外機の間を循環している冷媒ガスが、室内機で取り込んだ室内の空気の熱を室外機へ運びます。その空気が熱交換器で冷やされて室内に戻り、温風がファンから外へ放出されるという仕組みです。暖房運転の場合は、冷房運転とは逆のことが行われます。

暖房運転では、室外機から取り込んだ空気の熱を圧縮機で高温・高圧にします。それによって暖められた空気を室内へ送り込み、冷えた空気はファンで外に放出するという仕組みです。

エアコンの冷房機能は、どんなに外が暑い日でも冷たい空気を部屋の中に放出して涼しくしてくれます。では、エアコンはどのような仕組みで室内の温度を下げているのでしょうか。その仕組みをもう少し詳しく見ていきましょう。

すでに紹介したように、エアコンは外気を取り込むことはなく、あくまでも室内の空気のみを取り込む方式です。暑い日は、当然ながら室内の空気は熱を持っています。

その熱い空気は室内機に取り込まれた後、室内機の中にある熱交換器で空気と熱が分けられ、空気の「熱のみ」が冷媒ガスに移されるのが、冷房運転の第1段階です。

室内機の熱交換器で熱が取り除かれた空気は冷たくなり、その空気は室内へ戻されます。熱がなくなった冷たい空気をファンで放出することにより、冷房運転は室内の温度を下げられます。

室内機の熱交換器で室内の空気から熱を乗せた冷媒ガスは、室外機へ移されます。そして室外機の圧縮機で高温・高圧の液体になり、熱交換器で冷却される際にファンで暖かい空気が外へ放出されます。

室外機で熱を降ろした後の冷媒ガスは再び室内に戻り、冷房運転中は室内の空気を吸引するところから同じ動作が繰り返されます。

エアコンには、冷房と暖房のほかに「除湿」機能があります。基本的に、除湿は冷房と同じように室内機の熱交換器で空気の熱を奪い、熱い空気に含まれた水分を冷やして水分を減らすという仕組みです。

冷房と同じ仕組みではありますが、除湿機能は部屋を冷やすよりも湿度を下げることに重点を置いた運転となっています。除湿運転は、室内の温度も下がりやすくなります。

エアコンの暖房運転は、どのように暖かい空気を室内に送り込んで温度を上げているのでしょうか。暖房運転では冷房運転とは逆のことが行われていますが、今度は暖房運転がどのような仕組みで行われているのかを紹介します。

暖房運転では、まず室外機が外気を取り込み、熱交換器で冷媒ガスへ外の空気の熱が移されます。このとき、循環している冷媒ガスは室外機の減圧器で低温・低圧の液体となっているため、室外の気温が低い場合でも外気からの熱をもらえる仕組みとなっています。

また、冷房時とは逆に、室外機からは冷風が放出されます。

熱交換器で外気からの熱を移され、中温・液体の状態になった冷媒ガスは、室外機のコンプレッサーで圧縮されます。圧縮されることにより、冷媒ガスは約80度の高温・高圧状態の気体に変化します。

コンプレッサーで圧縮されて高温の気体になった冷媒ガスの熱は、室内機の熱交換器で室内の冷たい空気に移されます。その際、室内で取り込んだ空気が暖められ、温風として室内に放出されることにより、室内を暖められるという仕組みです。

室内の空気へ熱を移した後の冷媒ガスは、膨張弁を通ると再び圧力が下がり、約0℃の低温・低圧状態の液体となって室外機へ戻ります。この状態で冷媒ガスは室外機へ戻り、暖房運転中は液体・気体の状態を繰り返して熱を得て部屋の中を暖めるというのが、暖房運転です。

エアコンは部屋の中だけではなく、車にもカーエアコンとして装備されていることが多いでしょう。カーエアコンは一般的なエアコンのような室内機や室外機はありませんが、同じ仕組みとなっているのでしょうか。車のエアコンの仕組みについて解説します。

カーエアコンが装備されている車でも、外観からは室外機にあたるものは見当たらないのではないでしょうか。なぜかというと、カーエアコンの室外機はエンジンルームの中にあるからです。

カーエアコンの室外機にあたるのは「コンデンサー」と「コンプレッサー」という機器で、これら2つはどちらもエンジンルーム内に搭載されています。

カーエアコンで一般的なエアコンの熱交換器にあたるのが、「エバポレーター」という機器です。エバポレーターは車内にのみ設置されており、さらに冷風や温風を放出する送風口が、車内前席の足元を中心に設置されています。

カーエアコンの冷房の仕組みは、家庭用のエアコンとほぼ同じです。カーエアコン用の冷媒ガス「エアコンガス」をコンプレッサーで約70℃の半液体にし、コンデンサーで冷やして液状にします。

液状のエアコンガスは分離・乾燥機で水分やゴミが取り除かれた後に膨張弁でエバポレーターに噴射され、その際にエバポレーターの周囲の熱を奪うことで冷たい風をファンから送り出すのが、カーエアコンの冷房です。

家庭用エアコンの暖房機能は冷房と逆の仕組みとなっていましたが、カーエアコンの暖房は冷媒ガスを使用せず、エンジンの熱を使用しているという点が大きく異なります。

車のエンジンは、冷却のためにラジエーター液という冷却液が循環しています。エンジンの熱によって暖められた冷却液がラジエーターへ引き込まれ、その熱をファンで送り込むことで、車内を暖めています。

エアコンを使用すれば室温を適度に調整してくれます。効果的なエアコンの使い方を知っていれば、電気代を節約しながらさらに効率的に快適な室温を保てるようになるでしょう。以下に挙げるポイントを押さえて、上手にエアコンを使いましょう。

エアコンは、室内機から送る風量を調整できます。好みの強さにできるほか、自動モードを備えている機種が数多くあります。

電気代を節約するためには、「微風」や「弱風」がいいと思われがちですが、風量が弱いと設定温度や快適な温度に達するまでに時間がかかり、余計な電気代がかかりますす。快適な室温と電気代節約のためには、風量は自動運転にしておくのがおすすめです。

エアコンで室内の温度を快適にするには、空気と温度の性質を利用しましょう。温かい空気は上へ、冷たい空気は下に溜まる性質があります。この性質を利用して、冷房時は水平にして風を上の方へ、暖房時は逆に下へ風向きを調整しましょう。

すると室内の空気が対流しやすくなるため、ムラなく部屋全体が快適な室温にできます。部屋の空気を循環させる、サーキュレーターを使うのもおすすめです。以下の記事では、サーキュレーターの効果的な使用方法を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

エアコンの室内機には、フィルターが搭載されています。室内の空気を吸い込んで室温を調整していることから、エアコンを使い続けている間はフィルターにゴミやホコリが溜まりやすいです。

フィルターが詰まるとエアコンの効果が弱くなるばかりか、カビが繁殖してしまいます。効果的かつ清潔にエアコンを使い続けるためにも、フィルターは定期的に掃除をしましょう。同じように、室外機にも汚れが付着しやすいので、定期的な掃除やメンテナンスをおすすめします。

また、室外機の周囲に雑草や障害物などがあると、給排気の障害になったり、故障の原意になったりする場合があります。室外機も、周囲に障害物がないかどうか定期的にチェックしましょう。

普段からエアコンを使ってはいるけれど、仕組みまでは知らなかったという人も多いのではないでしょうか。エアコンの仕組みを知ると、効果的な使い方もおのずとわかってきます。室内で快適に過ごすためにも、エアコンの効果的な使い方を知っておきましょう。