エアコンのポンプダウンについて紹介｜爆発の危険性や原因は？自分で取り外しできる？

引越しでエアコンを新居に持って行く場合や、買い替えのために今まで使っていたエアコンを処分する場合には、室内機と室外機、そして両者をつなぐパイプを取り外さなければなりません。その際必要となるのがポンプダウン作業です。

ポンプダウンとは、エアコン内部に残っているフロンガスを回収して室外機内に閉じ込める作業を言います。最近は、自分でエアコンを取り外したい方も多く、そのような場合にはポンプダウン作業も自力で行っています。

ただ、このポンプダウン作業は一歩間違えると爆発を伴う大きな事故の原因にもなりかねず、作業には細心の注意が必要です。この記事では、ポンプダウンの危険性や正しい方法、間違えたときの対処法などをご紹介しますので、自分でやるか業者に依頼するか迷っている方は参考にしてみてください。

エアコンの取り外しをした経験がない方は、ポンプダウンを知らない場合が多数です。自力で取り外しを考えている方は、エアコンの仕組みや原理、さらにポンプダウンを行う必要性を確認しましょう。

ポンプダウンについて解説する前に、まずはエアコンの仕組み・原理を知っておきましょう。エアコンは室内機と室外機、そして両者をつなぐ配管で構成され、その配管の中には部屋の温度調節に欠かせない冷媒ガスが循環しています。

冷房運転の場合には、室内機が吸い込んだ部屋の熱を冷媒が室外機へと運び、熱交換器の作用で熱を外に放出します。そして冷えた冷媒が再び室内機に戻り、熱を吸収するサイクルを繰り返して部屋が涼しくなっていくのです。

エアコンを取り外す際、配管を循環する冷媒ガスを室外機に回収しなければ、冷媒が失われてしまいます。そこで行うのがポンプダウンと呼ばれる作業です。ポンプダウンでは室内機や配管に残った冷媒を室外機に閉じ込め、再設置まで失われないように保っておきます。

今まで使っているエアコンを再設置する予定がある場合、ポンプダウンをせずガスが抜けてしまうと再設置の際にガスの充てんが必要になり、余計な手間とコストがかかってしまいます。仮に処分する場合でも、この冷媒ガスが大気中に放出されれば地球温暖化にも影響するため法律で義務付けされています。

また、エアコンの取り外し作業でポンプダウンを行わないと、配管接続部のナットを緩めたとたんに配管に残った冷媒ガスが噴出します。これは大変危険で、フロンガスや代替フロンガスが皮膚に接触すれば火傷、目にかかれば失明を招く事態にもなりかねません。

ポンプダウン作業には配管外しや室外機のボルト外しをする必要があり、1つ1つの工程を正しく行わないとガスやオイル漏れが発生して大変危険です。ガス漏れやオイル漏れに気づかずに作業を進めてしまうのが原因で室外機が爆発する事故も起こっています。

万が一室外機が爆発してしまうと、自分自身が負傷するだけでなく、破片が飛散して近隣住民にも危害が及ぶ可能性もあるので覚えておきましょう。自分で行うのもいいですが、少しでも不安がある場合には専門業者に依頼するのも大切です。

以下に紹介する「事故情報データバンク」にはポンプダウンの関連事故が掲載されているので、参考にしてみてください。

ポンプダウン作業は15分程度で手早く完了させるのが理想とされています。効率よく作業を進めるためにも、事前に必要な工具を揃えておきましょう。以下に必要な工具をまとめましたので準備の参考にしてください。

• 六角レンチ（4mm）
• モンキースパナ2本
• プラスドライバー
• ゲージマニホールド
• 軍手
• エアコンの取扱説明書

ゲージマニホールドは冷媒を回収する際に、完全に回収できたかを計るための道具です。あるとより安心して作業が行えますが、マニホールドなしでも時間を計測すれば冷媒を完全に回収できます。

ポンプダウン作業では最低温度での冷房運転が必要となります。実際に取り掛かる際に冷房運転ができないとポンプダウン作業を始められないので、正常に運転するか確認しておきましょう。特に寒冷地や寒さが厳しい冬場はうまく稼働しない場合もあり、強制冷房運転をするかどうかの判断目安にもなります。

エアコンの設置を業者に依頼した場合や設置から年月が経っている場合には、室外機の搬入経路が分からない方も多いです。エアコンを取り外した後スムーズに運搬するためにも、確実に通れる経路を確認しておきましょう。

ポンプダウンでは、まず初めに最低温度で冷房運転をして、室内機を5分程度稼働させます。リモコンが壊れている場合や室温が最低温度より低い場合には、最低温度で冷房運転を開始してもファンが回らない場合があります。

そのようなときには強制冷房運転を行ってください。強制冷房運転の方法はメーカーや機種によって異なるので確認しておきましょう。

室外機のファンが回り始めるのを待っている間に、プラスドライバーを使って室外機の側面カバーを外しておきましょう。側面カバーを外すと配管の接続部が見えるので位置を確認します。屋外での作業になるため、側面カバーを止めていたネジが風で飛ばされたり紛失したりしないようにしてください。

次にモンキースパナを使って2本の配管のバルブキャップを緩め、手で回して外します。このとき、太いほうの配管は室内機から冷媒を受け取る役割、細いほうの配管は冷媒を送る役割があります。加えて、室外機のチャージポートのバルブも外しておきましょう。

バルブが硬くて回らない場合はモンキースパナを2本使うと回しやすくなります。ただし、あまり力を入れすぎるとバルブキャップが変形する可能性もあるので注意です。

ここからはいよいよ冷媒の回収に入るので、室外機のサービスポートにゲージマニホールドの青色のホースを接続しておきましょう。室外機のファンが回っているかを確認し、細管のバルブに六角レンチを挿して右回りに締めます。

このとき六角レンチの回しが足りないとガス漏れの原因になります。2～3分運転を続け、ゲージマニホールドの連成計の目盛りが0になったのを確認できたら、太管のバルブに六角レンチを挿し、右回りにしっかり締めましょう。

これで室外機内に冷媒ガスが閉じ込められます。最後に室内機の冷房運転を停止し、ゲージマニホールドを外します。サービスポートと太管、細管のバルブキャップをモンキースパナで締めたら作業は終了です。

寒冷地や厳しい寒波が訪れた冬場は冷房運転をしてもファンが稼働せず、強制冷房運転を行わなければならない場合があります。ここでは、そんな強制冷房運転がうまく作動しなかったときの対処法を見ていきましょう。

強制冷房運転はメーカーや機種によって操作方法が異なります。稼働の仕方が分からない場合には憶測で操作せず、取扱説明書で確認するのが大切です。もし説明書に記載の通りに操作をしても強制冷房運転が開始されない場合には、メーカーに問い合わせて直接操作方法を教わりましょう。

本来、強制冷房運転はエアコンの保守・メンテナンス・ポンプダウンの際に短時間強制運転させるための機能です。長時間使用は、機器に負担がかかるため避けましょう。

スイッチの名称はメーカーによりさまざまですが、大体のメーカーは室内機のスイッチを長押しすると強制冷房運転が開始します。強制冷房運転の操作方法や運転時間はメーカー・機種により異なるため、自宅エアコンの強制冷房運転の時間が何分か、取扱説明書を確認してから運転を開始しましょう。

なお、調査した限りでは、強制冷房運転はだいたい30分程度に設定しているメーカーが多く見受けられました。

暖房運転では室外機の圧縮機を利用しての吸引回収が難しいので、ポンプダウンはできません。万が一、暖房運転をしたままポンプダウンを進めてしまうと室内機やゲージが故障する可能性もあります。ゲージマニホールドを取り付けている場合には、針がマイナス方向に進むので気づきやすくなります。

バルブを締めてから接続配管を外すときに、プシューっと長い空気音がする場合には、ガスが漏れポンプダウン作業がうまくいっていない可能性が高いです。正常時はプシュッと短い空気音がするので、よく音を聞いて判断しましょう。

ポンプダウンがうまくいかないときは、バルブの締めが甘い、冷媒ガスを完全に回収していないうちにバルブを締める、そもそも強制冷房運転ができていないなど、いくつかの原因が考えられます。

ただし、一度失敗してガスが漏れてしまうとやり直せないので、再設置の際に専門業者に依頼して冷媒ガスを充填してもらいましょう。その際、修理費の相場は1.5～2万円といわれています。

ここまでポンプダウンの方法について詳しく見てきましたが、ポンプダウンは仕組みや手順が分かっていても人によっては難しいと感じる作業です。一般的に作業時間の目安は15分程度といわれ、あまり時間をかけすぎるのもよくありません。

また、異変を感じつつ作業を続けると故障や事故に繋がりかねないので、作業中に様子がおかしいと感じた場合には作業を中断する勇気を持ちましょう。そして専門業者に相談をおすすめします。

業者にエアコンの取り外し作業を依頼すると、一般的にポンプダウンも作業に含まれているケースが多いです。相場としては6,000～8,000円程度なので、自力でポンプダウンに挑んで失敗した場合にかかるコストより安いかもしれません。ですので、少しでも不安のある方は無理をしないようにしましょう。

壊れたエアコンはポンプダウン「できない」です。自力で取り外す場合は、冷媒回収装置で処理をする必要があります。購入なら10万円以上かかりますが、レンタルなら1日2,000円程度です。しかし、安全面や手間を考えると、エアコンが壊れている場合は、専門業者にお願いするのが確実です。

エアコンの真空引きとは、エアコンの取り付け工事の際に行う作業で、エアコン本体と室外機をつなぐ配管を真空にする作業です。真空引きをせずにエアコンを取り付けてしまうと、エアコンの効きが悪くなったり故障の原因になったりします。

インターネットで自力で行う方法も紹介されていますが、故障や冷却ガス漏れによる補充など業者に頼む以上の出費になる可能性もあります。できるだけ専門業者に頼むのがおすすめです。

エアコンのポンプダウン作業は、1つ1つの工程を正しく丁寧にこなしていけば経験がなくても自力で行うのは可能です。ただし、手順を間違えたり注意を怠ると、爆発や故障にも繋がる危険な作業なので覚えておきましょう。記事の内容を参考にして、自分で行うか業者に依頼するかを検討してみてください。